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親父の寝言

今私は親元から離れ、東京に住んでいる。


なんとなく実家にいる父親の寝言を思い出した。

あれは、近所迷惑になるくらいの代物だった。

父の寝言の中で元も印象的だったのが
ポーン!!
ホーーーーーーーーーーーーーーーっ
である。

「ホ」が好きなのか、父よ。


まず、「ポーン!」だが
どうやら父は夢の中でいつもの仲間と麻雀をしていたらしい。
そして、きっと良い感じの状態だったのだ。
いつも負けてばかりだった父の事だ。喜びの余り叫んでしまったのだろう。


できることならば普通に夢の中だけで、せめて小声で控えめに「ポン」ならいいのだが
あのでかい声で「ポーーーーン!」はいかん。
男というもの、興奮した時こそ冷静な態度をとるのがかっこいいというものだ。


しかし、そんな事を全然考えてない父には、
なにか別の、訳のわからぬ男らしさがあった


が、実際問題、あの声。
ドッキリした。

テレビの音量で例えると「35」といったところか。
分からない人にはとことんわからない例えだと、自分でも思う。


しかも「ポン」である。
あの父が「ポン」である。
半濁効果のせいか、妙にかわいらしいのであった。

さて、次に「ホーーーーーーー」だ。


これを最初に聞いた時、こんな深夜に一体何が始まったのかと思った。
父の「音量35」に、素敵なビブラートがかかっていたのだ。


タチの悪い寝言である。
常日頃、アビリティーアップしているのだ。


その声は異常に高く、ボーイソプラノのごとく家中に響き渡った。


「年老いた若きオペラ歌手」という新ジャンルが、
父の布団の上で産声を上げていたのだ。


しかし、その高い声は、まるで危険を知らせるサイレンのように聞こえ、
私は何か妙な胸騒ぎを覚えた。

この時ばかりは、真剣に父の身を案じたのである。


両親の寝室に急いでかけつけたところ、
そこには、自分の布団の上に正座し呆然と父の顔を眺めている母と、
先程まで自分がニュータイプのシンガーだった事も知らずにスヤスヤと眠る父がいた。


心配して損した。

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